森春樹『蓬生談』巻之四「昔岡家中某の屋敷にて殺したる蛇死にて後大に成りし事」より

蛇の祭

 豊後岡城の西南 上津野というところに、家老屋敷をはじめ諸士の屋敷がある。
 そこで昔、慶長のころとか、わずか一メートルほどの蛇を殺したら、死んだ後にはなはだ巨大化して、およそ六メートルあまりの死骸となった。
 大変なことだと、屋敷の主人は人夫を雇って地に埋め、塚を築いた。その蛇塚というのが今もある。

 蛇を殺した日とかに、屋敷で祭が行われるそうだ。
 もし祭がおろそかだと、祟りがあるらしい。
あやしい古典文学 No.686