宮負定雄『奇談雑史』巻七「古猫死人をさらひし事」より

雷獣になりたい

 常陸国の潮来に、長照寺という禅寺がある。
 この寺に居着いている古猫が、ある夜、住職の夢に現れて告げた。
「今日、檀家の某の老母が死去して、葬送は明日の正午だそうな。それについて、あらかじめ知らせておきたいことがある。我はこのたび雷獣の仲間入りするために、明日、かの老母の死骸を奪うつもりだ。猫はいかに年経たとて、死人を取らないことには雷獣の仲間入りができないのだ。だから是非とも死人を取るからな」
 住職は驚いて言い返した。
「あの老母はこの寺の大事な檀家の人で、明日、わしが引導することになっている。どうしておまえに取らせたりするものか」
 しかし猫は、何が何でも取ると言って聞かず、そのまま夢がさめた。

 住職は檀家の某に、棺を厚板で造らせ、鎹(かすがい)でもって堅く封じるよう伝えた。さらに正午の予定だったのを午前十時に早めて葬送したが、たちまち黒雲が舞い下りてあたりが真っ暗闇となるなか、棺の板が裂ける音がして、あっという間に骸は攫われてなくなった。
 それから三日の後、寺の裏の畑の中に、かの死骸が放置されていた。用済みになったのかもしれない。
あやしい古典文学 No.1994