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松浦静山『甲子夜話』巻之二より |
哀れ、雷獣 |
出羽の国の秋田は、冬、雪がことのほか降り積もって、高さ十数メートルに及び、家を埋めるのはむろんのこと、山を没するほどである。 また、冬に雷の鳴ること甚だしく、夏に劣らない。むしろ夏のほうが雷は少なく、音も小さいのだ。冬は頻々と雷鳴し、吹雪に交じるその音は極めて激しい。 落雷もたびたびあるが、雷が落ちるたび、獣が一匹いっしょに落ちてくる。猫のような形のものだという。 秋田侯の近習に、某という乱暴な気性の者がいた。 ある日また雷鳴激しく、某の家に落雷した。見ると例のごとく雷獣がいて、そこらをうろうろしている。 某はこれを捕獲し、煮て喰ったという。 |
あやしい古典文学 No.44 |
座敷浪人の壺蔵 | あやしい古典の壺 |