大田南畝『半日閑話』巻十五「両国橋巷説」より

夜空を翔ける

 文化十三年八月初旬某日の夜更けのこと、狩衣を着て烏帽子(えぼし)姿の者が、本所方向から馬に乗って空中を翔けて来た。
 両国橋の茶屋に腰かけていた者が、確かに見たという。

 このごろもっぱらの噂だ。
あやしい古典文学 No.52