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橘南谿『北窓瑣談』巻之四より |
雷獣、雲に乗る |
下野の国の烏山のあたりに、雷獣というものがいる。 形は鼠に似て、体つきはイタチより大きく、四足の爪がきわめて鋭い。 夏のころ、近辺の山のあちこちに自然に穴があき、その穴から雷獣が首を出して空を見ていると、夕立の雲がやって来る。 その雲のうち、乗れるのと乗れないのとを雷獣はよく見分けて、乗ることのできる雲が来たら、ただちに雲に飛び込んで山を去る。 雷獣が雲に入ると必ず雷が鳴るというわけではない。ただ、雷になると言い伝えられているだけである。 そのあたりでは春時分、雪を分けて雷獣の狩をする。 何故かというと、雪の多い国だから冬の作物は作れず、春になって山畑に種芋をうえるのだが、この獣が掘って喰ってしまう。その害がひどいので、百姓たちが憎んで狩るのだという。 この獣のことを、中国の書物では「雷鼠」といっているそうだ。 |
あやしい古典文学 No.68 |
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