西村白烏『煙霞綺談』巻之二より

凶兆

 尾張の熱田神宮寺が、門を建てるというので、地面を掘り起こして基礎工事をしていた。
 一メートルあまりも掘ったところで、土の中になにやら蠢く気配があった。工夫たちは不思議に思って、その場所をさらに掘ると、土中からカラスくらいの鳥が湧いて出て、そのままどこへともなく飛び去ってしまった。

 それから五日後に、寺の住職が亡くなったという。
あやしい古典文学 No.116