『古今著聞集』巻第二十「寛喜三年高陽院の南大路にして蛙合戦の事」より

かえる合戦

 寛喜三年の夏、高陽院の南の大路の堀に蛙が数千匹集まって、敵味方に分かれて戦った。

 一匹が一匹と食い合い、あるものは食い殺されて死骸をさらし、あるものは息も絶え絶えで白い腹を見せている。殺されても殺されても、新手が限りなく集まってくる。
 ある人が試みに、蛇を一匹連れてきて中に投げ入れたが、蛙どもはまるで恐れない。蛇もまた蛙を呑もうというそぶりも見せず、早々に逃げ去った。

 この蛙合戦、京都じゅうの者が市をなして見物したのであった。
 ずっと昔にも、蛙の戦いがあったと伝えられている。
あやしい古典文学 No.140