『片仮名本・因果物語』中の廿三「亡母子を憐れむ事」より

亡霊来たりて

 紀州でのこと。
 ある人の妻が難産で死んだ。しかし、赤ん坊は生まれて、健康であった。
 その後、死んだ妻の亡霊がやって来て、子を抱き、乳を飲ませ、三歳になるまで育てた。
 妻は十七歳で死んだのだが、三年過ぎても十七歳に見えた。

 成長した子が十七八のころを見知っている人が、確かな話として語ったところでは、顔色が少し悪い男だという。
あやしい古典文学 No.146