三坂春編『老媼茶話』巻之壱「酔人」より

虎 vs.酔っぱらい

 虎は、酒に酔った人を襲わない。

 ある村の男が、町に出て酒を飲み、帰る途中、崖っぷちで酔いつぶれて寝てしまった。
 そこへ虎がやって来て、嗅きまわった。
 虎の髭が、たまたま酔っぱらいの鼻の穴に入って、大きなくしゃみをした。
 虎はびっくりして断崖から足を踏みはずし、転落して死んだ。
あやしい古典文学 No.172