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| 菅茶山『筆のすさび』巻之四「機巧」より |
鳥人幸吉 |
| 備前岡山の表具師で幸吉という者は、鳩を捕らえて体重と羽翼の長さを計り、自分の体重に適する翼を製造した。そして仕掛けを工夫して、胸のところで翼を操り、羽ばたいて飛行した。ただし、地面から飛び上がることはできなかったので、屋根から飛んだのであった。 ある夜、町外れの空を飛んでいると、野原で宴会をしている。もしかして知っている人がいるかもしれないと思って、降下して近づいたところ、揚力が失われて墜落した。 宴会の男女は驚き叫び、一目散に逃げていった。 酒肴がいっぱい残っていたので、幸吉は心おきなく飲み食いし、さて、飛び去ろうとしたが、やはり地面からは飛び上がれない。やむをえず翼をたたんで歩いて帰った。 その後、このことが露見して、幸吉は町奉行に呼び出された。 「人のしないことをして世を騒がすのは、趣味道楽であっても犯罪である」との沙汰で、翼を取り上げられたうえ、住んでいた町から追放という処分が下された。 一時の笑い話でしかないが、珍しいことだから記録しておく。寛政以前のことである。 |
| あやしい古典文学 No.252 |
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