大田南畝『半日閑話』巻十「中万字屋の幽霊」より

中万字屋の幽霊

 文化七年十月末、新吉原の妓楼中万字屋で、女郎を葬った。
 この女郎は、病気で見世に出ないのを、仮病だと折檻されていたが、ある日、小鍋で物を煮て食おうとしているのを見つかり、鍋を首にかけた格好で柱に縛られた。そのまま放置されて死んだのである。

 その幽霊が、首に小鍋をかけて、中万字屋の廊下に出るという。
あやしい古典文学 No.291