暁晴翁『雲錦随筆』巻之四より

治療法あれこれ(雲錦随筆版)

 小さな虫が耳に入ったときは、目・口・鼻とも堅くふさいで、虫が入った方の耳から息を強く吹き入れる。すると反対側の耳から、虫が息に吹かれて飛んで出る。

 魚の毒にあたったら、山梔子(くちなし)を煎じて用いるべし。フグにあたった場合はイカの墨を飲むべし。
 松茸の毒は、蓼(たで)の穂を服用すれば解毒する。茄子を用いるのもよい。

 鉄製のものが身に刺さって抜けない場合は、乾燥したカマキリを粉末にして傷口に塗り込む。すると鉄のかけらが少し出てくるから、それを毛抜き・釘抜きのたぐいによって抜く。これは妙術である。

 ムカデに刺されたとき、ナメクジを擦りつけると、ただちに痛みがなくなる。また、酒を熱くして疵を洗うと、たちまち熱気が消えて痛みが失せる。

 強弓を力いっぱい素引などすると、目玉が抜け出て十五センチほどもぶら下がってしまうことがある。そのときは、目玉を手のひらに受けて冷水をそろそろとかければ、元どおり眼窩に収まる。
あやしい古典文学 No.406