津村淙庵『譚海』巻之十三・十五より

治療法あれこれ(譚海版)

 鼠に噛まれた傷は、猫のよだれで治る。猫の鼻に生姜をすったのを塗るとよだれを流すので、それをとってつけるのだ。
 猫の毛を黒焼きにしてつけるのもよいという。
 また、抹香をつけたり、樒の葉を煎じて服用するのも、たいそう効き目があるとのことだ。

 眼に鼠の小便が入ったときには、猫の小便をさすとよい。
 もし猫の小便が手に入らなければ、生姜の絞り汁でもよい。

 耳だれが出たら、ぬかみその中の三四年を経た古なすびを裂き、その汁を耳の中に絞り込むべし。
 また、大根の絞り汁をこよりでさすのも効く。

 水に溺れて死んだ人を生き返らせる方法がある。
 まず、その人を牝牛の背に俯けにくくりつけ、牛の尻を叩く。すると牛はそこらを走り歩き、そのたびに死人の腹が押されるので、目や口から水を吐き出す。
 このようにしてよく水を出させてから、藁を焼いた灰の上に横にし、前後から藁火を燃して暖めれば、その人は息を吹き返す。
 その後は、気付け薬などを与えて療治すればよい。
 また、溺死した人に鶏のとさかの血を採って飲ませると、即座に息をして水を吐く。
あやしい古典文学 No.432