三坂春編『老媼茶話』巻之壱「石中の人」より

化石人

 『二程全書』の著者の一人、伊川(いせん)は、同書において次のように語っている。

「私が南中にいたときに聞いた話だ。
 採石を業とする人が、あるとき落盤にあって石に埋もれた。幸い死ななかったが、重なり合う石の中にあって身動きもかなわず、時がたつにつれてはなはだしく飢えた。やむをえず石膏をとって食い、飢えをしのいだ。
 そうして何年もたった後、やはり石を採りに来た別の人に発見され、助け出された。
 石の中から出ると、次第に体が硬くなるのを感じた。風が当たると微かに身が凍るようで、そのまま化して石となった。」
あやしい古典文学 No.436