岡田新川『秉穂録』第一編巻之下より

ふぐ島・がま山

 安房勝山の浦で、海上に忽然と小島が現れた。
 数日後、島が口を開けた。島ではなくて、ばかでかい河豚(ふぐ)だった。

 やがて沈んで見えなくなった。



 長崎の福田六左衛門という人が、友人五六人と野遊びに出かけて、とある小山の上で酒を酌み交わしていた。
 中の一人がふと気づいて、みなに囁いた。
「おい、大変だ。ここは大きな蝦蟇(がま)の上だぞ。あそこで目が光った」
 六左衛門は一計を案じ、竹筒に火薬を仕掛けて蝦蟇の口に差し込んだ。一同が走って数百メートルも逃げたとき、背後で爆発音がとどろいた。
 戻ってみると、蝦蟇の姿はなかった。

 六左衛門は、ほどなく狂死した。
あやしい古典文学 No.460