根岸鎮衛『耳袋』巻の四「青砥左衛門加増を断りし事」より

夢のお告げ

 青砥左衛門藤綱に、当時の鎌倉幕府執権から、
「夢のお告げに、左衛門は忠誠な者だから加増すべし、とあった。よって加増しよう」
とのお達しがあったが、左衛門はきっぱりと断った。
「加増の褒美を与えようという話なのに、断るのは馬鹿げている。だいいち失礼ではないか」
と言うと、
「武功その他の手柄による加増であれば、ありがたくいただきましょう。夢のお告げで加増するというなら、もし『青砥左衛門の首を刎ねよ』というお告げがあったら、首を刎ねなさるのか」
と応え、ついに受けなかったという。

 おもしろい議論である。
あやしい古典文学 No.468