『古今著聞集』巻第二十「伊賀国住人其女を三室池の龍に取らるる事」より

三室池

 文治年間のこと、伊賀の国の住人某が、娘を、同国三室池の龍にとられた。

 龍は毎晩娘のもとに通っていたが、ある夜とうとう娘を連れて行った。両親は跡をつけて、場所を確かめた。
 後日、両親がそこへ行って娘に会うと、龍は檜皮葺の家を出現させたが、それは幻影であった。
 娘は、
「明年七月にこの池を去って、川を下るのです」
などと語った。
あやしい古典文学 No.484