『十訓抄』第七より

はふたつ

 宇治殿と呼ばれた藤原頼通は、「葉二つ」という横笛の名品を所蔵していた。
 帝がお聞きになって、その笛を見たいものだと思い、頼通に使いを送った。
 使いは、
「御はふたつをお召しでございます」
とばかり告げて、笛ということを言わなかったので、頼通は、
「この老体から、歯を二つもお求めになるとは、あまりに辛いことでございます」
という返事をさしあげたという。

 なんだかよくわからない話である。
あやしい古典文学 No.492