岡村良通『寓意草』上巻より

千丈が滝の鰻

 豊前の国に「千丈が滝」といって、幅三十五メートル、落差百五十メートルの大滝がある。
 その滝壺から流れる川の岸が崩れたとき、氾濫する濁水とともに大鰻が迷い出た。

 鰻は二つの胸びれを巨大な団扇のようにひらめかせて、そこら一帯を這い回った。
 最初は何なのか見当がつかず、恐れて誰も近づかなかったが、四五日たって死んだのを見て、鰻とわかったのである。
 体長は二十五メートルに及んだとのことだ。
あやしい古典文学 No.550