岡村良通『寓意草』下巻より

尻の瘤・肩の瘤

 妻の兄の家に、十四歳くらいになる下働きの少年がいた。右の尻に手まりほどの瘤ができて、痒く、また痛くて堪え難かった。
 そのうち瘤の皮がたいそう薄くなったので、剃刀でもって切開すると、中から虱がざっとこぼれた。
 虱は出続けて、結局、大きな竹ざるに二杯分も出た。とともに少年は痩せ衰えて、八日か九日後に死んだ。

 生方某という人の知人は、左の肩に小さな瘤があって、ときどき痒くなった。
 ある日、瘤が自然に裂けて、青蛙が一匹おどり出た。
 その人は、今もいたって元気で暮らしているそうである。
あやしい古典文学 No.556