『斉諧俗談』巻之一「袋星」より

袋星

 ある書にいう。

 孝霊天皇の三十六年正月、倭迹日襲姫(やまとひそひめ)が夫なくして妊娠し、やがて怪しい児を出産した。
 その胞袋(えな)は破れないまま、まるで玉のようで、中に男がいるのが透き通って見えた。
 人々はなんとかして胞袋を破ろうとしたが、どうしても破れなかった。

 その夜、胞袋は飛んで天に昇り、星となった。
 いま銀河にある「袋星」が、それだとされる。
あやしい古典文学 No.574