本島知辰『月堂見聞集』巻之十八より

なんだか分からないもの

 享保十一年四月七日のこと。
 越後国上田ノ庄の安養寺という法華宗の寺で、南心経という納所坊主が、一夜のうちに不可解なものに変身したという。
 頭は馬に似ている。胴体は鳩の形で、羽がある。片足は人のもので、もう片足は鳥のようだ。尻尾があり、蛇に似ていて、先端から火を噴く。
 ものを言うのは尋常である。
 毎日、銅を三貫目ずつ食べる。それとは別に、尻尾のほうから毎日、米を三升ばかり摂取しているそうだ。
あやしい古典文学 No.629