本島知辰『月堂見聞集』巻之十八より

うめき鳥

 このごろ京都岡崎界隈、聖護院の森の端に怪鳥が出る。
 鳴き声が人のうめき声に似ているので、「うめき鳥」と呼ばれている。
 どんな形の鳥か見ようと、近辺の者が森の中を捜し歩いても見つからない。ただ声が聞こえるばかりである。
 土地の古老によれば、「三百年前にやはりこのあたりで鳴いたと言い伝えられている鳥だ」とのこと。

 一説に、「形は鷺に似て青色、声は早鐘のごとし」とも言われる。
あやしい古典文学 No.632