菅江真澄『かたゐ袋』より

死人島

 丹後路には、死人を海中の小島に捨てる風習がある。
 人が死ぬと、馬の飼葉桶のような木をくりぬいた棺に収め、親族が船に乗って島へ渡る。型どおりの葬儀をとり行い、死体は調度類とともに島に捨ておく。
 やがて、幡や天蓋などが波に運ばれて打ち寄せられるが、死骸が戻ってくることはない。サメなどが食べてしまうのであろうか。
 そこを死人島という。

 「出雲路にも同様のところがある」と、出雲の人が語った。
 黄泉の国に通じるという出雲なら、なるほど、さもありなんと思われる。
あやしい古典文学 No.660