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| 林羅山『怪談録』下「韋滂」より |
光物 |
| 唐の大暦年間、韋滂という人がいて、だれにも負けないほどの力持ちだった。肝も据わっていて、不気味な夜道を歩いても、まるで恐れなかった。 乗馬が巧みで弓術にすぐれ、つねに弓矢を携えていた。その弓矢で鳥獣を獲り、肉を裂いて炙り食うばかりでなく、蛇、昆虫の類、ミミズやケラにいたるまで、なんでもかんでも食う人だった。 ある日、都へ出た韋滂だったが、帰る途中で日が暮れて、泊まるあてもなかった。どうしたものかと困っていると、一軒の大きな家が見えたので、『あそこで宿を借りよう』と立ち寄り、門を叩いて頼んだ。 その家の主人が出てきて、 「泊めてもよいが、隣家で人が死んだばかりだから、怪しいことがあるかもしれん。どうするかね」 と言う。 「全然かまわんよ」 と応えると、主人は韋滂を迎え入れて、一つの座敷を与え、飲み物と食べ物を持ってきてくれた。 韋滂は少し考えて、馬を大桶の上に繋ぎ、従僕は別の場所に休ませることにした。 夜半、突然 大いなる光物が空を飛んで、扉の前まで迫った。その照り輝くこと、まったく火炎のようだ。 韋滂は座敷の暗いところから矢を放った。矢が当たると、光物はなにか響く声を発した。 さらに矢を三筋、続けざまに放つと、光物は小さく縮んで、動かなくなった。 韋滂は弓を手にしたまま光物に近寄り、刺さった矢を抜いた。すると、それまで宙に浮いていた光物が、力なく地に落ちた。 急ぎ火をともして見れば、それは丸い肉の塊だった。四方の隅に眼があって、眼を開くと光が出るのだった。 韋滂は喜んで、肉塊を煮て食ってみた。なんとも美味で、香ばしさがたまらない。 さらに肉を煮込んだ上で、小さく切り裂いて漬物にして食べると、これがまたいちだんと旨い。 そこで宿を貸してくれた主人に、その半分を分けた。主人はこの贈り物に驚愕したという。 『大平広記』に載っている話である。 |
| あやしい古典文学 No.715 |
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