山口幸充『嘉良喜随筆』巻四より

真相「南都の怪」

 春日山に出る馬の妖怪の正体は、この山の麓に久しく住む乞食で、髪も髭も剃らずにいた者だった。
 この者は五穀の類をまったく食わず、ときには墓をあばいて死人などを食っていたことが、このたび露見した。

 また、地中から掘り出したのは、鞠の大きさで少し平たく、金属でできたような物体二つだった。
 蓋があり、こじ開けてみると、内の臭気は耐え難いものだったという。
 少しそのまま置いてから見ると、二つは酢貝が寄るように互いに近寄っていたそうだ。
 古老は、「これは野槌といって、地中にあるものだ」と言うが、筆者は、むかし夫婦の首などを入れて一緒に葬ったのではないかと思う。「野槌」というものは、寡聞にして知らない。
あやしい古典文学 No.729