『岩邑怪談録』「赤人間の事」より

赤人間

 十河某という人が、岩国を流れる錦川へ川漁に行って、夜更けてからの戻り道、関戸のつき廻しというところを通りかかった。
 そのとき川の岸のほうから「エイッエイッ……」と、石を担いでいくような人の声が聞こえた。
 不思議に思ってのぞき見ると、肥え太った赤い人間が、真っ赤に焼けた鉄の棒を担いで、宙を歩いていた。
 川岸の上を赤々と行くその姿は、またとない恐ろしいものだった。
あやしい古典文学 No.733