人見蕉雨『蠅糞録』坤「三尺武士」より

三尺武士

 佐竹家家臣で岩堀少林という人は、独特の剣術の使い手だった。
 身の丈三尺の小人で、三尺三寸の長剣を腰に差すと、鞘の先が地面に擦れてしまう。
 そこで、鞘の先に車をつけて、カラコロと引いて歩いた。
 この人の羽織が岩堀の家に残っており、着丈は扇の長さより少しばかり長い程度だという。

 佐竹義重公に仕えた真崎雲井之助は身の丈八尺の雲つく大男で、袴の長さが世に伝わるところだが、その一方で、佐竹家にはこんな小さい豪傑もいたのである。
あやしい古典文学 No.737