『浪花見聞雑話』より

山うなぎ

 明和のころ、乞食が蛇を数匹首に巻きつけて、大阪の家々の門先を回り、
「常陸の国では、これを山うなぎといって……」
などと語りながら、さまざまな蛇遣いの芸を見せた。
 あるとき、
「銭を呉れるなら、こいつを呑んで御覧に入れよう」
と、蛇の胴の真ん中を握って、咽喉奥へ半分ばかり入れてみせた。
 あちこちでそんなことをするうち、過って蛇が咽喉から腹へ飛び込んで、その者はたちどころに死んだ。

 その後、こんな芸をする者は来ない。
あやしい古典文学 No.745