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平尾魯遷『合浦奇談』巻之二「チミ蟲」より |
チミ蟲 |
尾太山中の鉛沢というところに、チミ蟲という怪虫が棲息している。 形はイモリのようで、またトカゲにも似ている。背の青黒いのと赤いのとがあって、どちらにも黄褐色の稜文が二本ある。腹は淡い紅色で、体長は十五センチを越えない。 この虫は、好んで人間の男の精液を吸い呑む。それゆえ、鉛沢で野宿する者は、周囲に溝をめぐらして水を湛え、虫の侵入を阻む。 この虫に精液を吸われてしまうと、その後の一二年は陰茎の勃起不能に悩まされるのだ。 わが国に幽境・僻地は数多くあれど、チミ蟲はこの山中以外いないという。 外国にはいるかもしれないが、『本草綱目』にはいまだ見ない。奇虫の中の奇虫といっていいだろう。 |
あやしい古典文学 No.747 |
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