『岩邑怪談録』「柿の葉の化物の事」より

柿の葉の幼女

 目加田某という人の下女が、医者宅へ使いに行き、夜更けて帰る道の石橋の上で、二三歳ばかりの女の子に出逢った。
 小さな女の子が乱れ髪を垂らし、その髪を身の丈の倍余も引き摺って、柿の葉を拾っていた。
 女のことゆえひとしお恐ろしく、魂も消え入らんばかりになって、足を空にして走り帰った。
 家に入って水をたくさん呑み、やっと人心地ついて「化物を見た」と様子を語ると、皆々恐ろしく思った。

 この下女は、その後、まったく夜歩きできなくなったそうだ。
あやしい古典文学 No.756