『聖城怪談録』上「木村惣左衛門妻馬場にて怪事に逢ふ事」より

身に沁みる感じ

 木村惣左衛門の妻が、ある夜、外馬場辺を通ったとき、松の梢から何やら頭の上に落ちてきた。
 その瞬間、「シューッ」と音がして、五体に沁みこむ感じがあった。手をあげて頭に触ってみたが、何もなかった。

 家に帰ってから、ひどい頭痛に襲われた。
 後には、髪の毛がことごとく抜け落ちた。その様子は、多くの人が見たと話している。
 しかし幸いにも、やがてまた髪が生えたそうだ。
あやしい古典文学 No.771