浅井了意『新語園』巻之一「瘤ヲ割レテ死ス 宋書」より

悪い甥

 朱齢石は、中国の南北朝時代、宋の初代皇帝となった劉裕の部将である。
 年少のころから武芸を好み、勇敢であったが、その勇を軽々しく誇ることが多かった。家のことなどは、まったく顧みなかった。

 淮南というところに、蒋氏という、齢石の母方の伯父がいた。たいそう非力で臆病な人物であった。齢石は伯父を馬鹿にしきって、虫ほどにも思わなかった。
 ある時、伯父を寝かせて、一寸四方に切った紙をその枕に貼り付け、紙を的にして小刀を投げて遊んだ。八九尺のところから百回投げて、すべて当たった。
 小刀の切っ先が枕に貼った紙に突き立つたびに、伯父は怯え怖れて起き上がろうとしたが、齢石は許さず、小刀を投げ続けた。

 蒋氏の頭には、大きな瘤があった。齢石はそれが気になって、何かしてみたくてたまらなかった。
 伯父が寝入ったのを見定めて、密かに刀でもって瘤を突き割いたところ、伯父はたちどころに死んだ。
あやしい古典文学 No.810