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浅井了意『新語園』巻之八「狸怪 異苑」より |
狸の腹にまた狸 |
中国の南北朝時代、宋の元嘉十九年に、長山の留元寂という者が、一匹の狸を捕獲した。 この狸の腹を割くと、腹の中にまた一匹の狸がいた。 その狸の腹を破ると、またまた一匹の狸がいた。 三匹の狸の体を比べてみると、大きさがみな同じだった。 元寂は少しも怪異と思わず、皮を剥いで展ばし、家の裏庭に張っておいた。肉は煮て食った。 その夜、大勢の狸がやって来て、干された皮を囲んで、夜どおし声高く吠え叫んだ。 朝になって、裏庭へ行ってみると、皮は狸どもに持ち去られていた。 こんなことがあったにもかかわらず、元寂の身には何の災いも起こらなかった。 |
あやしい古典文学 No.817 |
座敷浪人の壺蔵 | あやしい古典の壺 |