進藤寿伯『近世風聞・耳の垢』より

美僧の足

 宝暦十二年閏四月下旬より、当地に一人の旅の僧がやって来た。ずいぶん美しい僧で、年のころは二十三、四と見えた。
 毎日托鉢に回る姿かっこうに、全体として変わったところはないのだが、ただ足の先が馬だった。蹄(ひづめ)があり、藁であんだ馬沓(うまぐつ)をはいていた。
 中島辺りで、これを見た人は多い。
あやしい古典文学 No.856