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森春樹『蓬生談』巻之七「亀の畑中にて年々死ぬる事」より |
亀が死ぬ畑 |
豊後日田郡有田郷の石松村に、浄徳寺という小寺がある。寺の庭に小さな池があって、杜若(かきつばた)や河骨(こうほね)などが咲き、たくさんの亀が棲んでいる。 しかるに、毎年夏、池の上の畑の中で多数の亀が死ぬ。 その様子はこうだ。亀が夕立のあと畑に上がって、のそりのそりと歩いていくと、腹の下に土が付く。行くにしたがい腹の土が厚みを増し、足先でわずかに土を掻いて進むようになる。ついには足が地面にほとんど届かず、まったく進めなくなって、そのまま日を経て死ぬのである。 亀や鼈(すっぽん)は卵生で、その卵は陸に上がって土や砂の中に産む。この畑で死ぬ亀も、きっと産卵のために上陸したものが、目的を果たしえず空しく死ぬのだろうと思う。 |
あやしい古典文学 No.864 |
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