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青葱堂冬圃『真佐喜のかつら』三より |
祟りを食う男 |
四谷南伊賀町に、伊之助という植木職人がいた。 あるとき伊之助は、戸山の尾張藩下屋敷に雇われて働いたが、昼、莚(むしろ)に腰を下ろして休んでいるところに蛇が這い出て、筵を横切ろうとした。とっさに斧で叩くと、蛇の頭がすっぱり切れて飛んだ。頭の行き先は、結局分からなかった。 その夜、家へ帰った伊之助が、飯櫃の蓋を取ると、中に蛇の頭があった。 伊之助はさして驚かず、すぐに包丁でその頭を裂き、竹の串に刺して火であぶって、酒の肴にして食った。 翌日になって、額に小さな瘤ができた。 こんな瘤など物の数ではないと、気にせず日を送るうちに、だんだん大きくなった。一寸五分ほども突出して、しきりに痒くなったので、小刀で根元から切り取り、傷あとをよく洗って膏薬を張った。 切った瘤をよく調べてみると、血肉の中に蛆がわいていた。さてはあの蛇がまだ祟るのかと思って、蛆を鉄槌で打ち潰し、魚の塩辛に混ぜて残らず食った。 その後はなんの障りもなく、瘤の傷もあとかたなく治った。 |
あやしい古典文学 No.875 |
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