『訓蒙故事要言』巻之十「花月之神」より

蝶の女

 中国、建安の章園老の妻は、宜興の潘氏の娘で、きわめて美しい女性であった。
 園老に嫁して数年を経ずして亡くなったが、その臨終のとき、部屋には無数の蝶が飛び交った。
 聞けば、彼女の誕生のときにも、数知れない蝶が舞ったという。

 霊廟をもうけて遺像をまつったところ、一羽の蝶が飛来して像に止まり、しばらくとどまってから飛び去った。
 その後、月命日のたびに遺像をまつると、冬でも夏でも必ず蝶が来て、ひらひらと羽を翻した。
 そして章家の人々は、彼女が花月の神だったことを知ったのだった。
あやしい古典文学 No.884