高力種信『金明録』第四冊より

暴力幼児

 今年の正月四日に、江戸の芝高輪の川べりに、四斗樽が漂着した。
 樽の中から泣き声がするので、引き揚げたところ、三、四歳くらいの小児が入っていた。ほかに書付が一通見つかった。開いてみると、
「この子供は、乳に喰いついて母親を殺し、その後また、抱き寝をしていた父親の睾丸を蹴り上げて半死半生の体になした。凶暴で手に負えないため、やむをえず樽に詰めて流した。」
とあって、しかし、どこの何者とも記されていなかった。

 この一件、高輪の町年寄から奉行所へ届出があったと、江戸より書状で知らせてきたので、ここに書き留めておく。
あやしい古典文学 No.890