大田南畝(著)/文宝堂散木(補)『仮名世説』上より

ふくろうの子

 支唐禅師が諸国修行の途中、出羽の国の某寺にしばらく滞在したときの話だ。

 寺の庭先には、椎の木の大きなのが朽ちて、半ばから折れ残っていた。
 住職が、人を雇ってその木を掘り取らせたところ、幹の空洞から雌雄の梟(ふくろう)が出て飛び去った。
 切り開いて空洞の中を見ると、梟の形を土で造ったものが三つあった。そのうちの一つは、はやくも毛が少し生え出て、くちばしも足も備わっていた。なんとなく生気もあるようだった。三つとも、大きさは親鳥と同じくらいだった。
 しきりに怪しがる住職に、禅師はこう説明した。
「実際に見るのは初めてですが、話には聞いていました。古歌に『梟のあたため土に毛が生えて昔のなさけ今のあだなり』とあるのは、このことを言ったに違いありません。梟はみな、土をこねて子にするものなのです」
 住職は、禅師の博識に感心したという。
あやしい古典文学 No.918