橘南谿『黄華堂医話』より

骨産

 薩摩の国の鹿野谷という村で、婦人が懐胎して八九ヶ月のころ、しきりに腹痛がして大量の血が下った。
 出血の後、そのまま出産することなく月日を過ごしたが、懐胎して膨らんだ腹は通常に戻らず、二三年もたってから、突然の激しい腹痛とともに、骨ばかりを出産した。
 最初の時には血肉ばかりが下って、骨は後まで残っていたものか。奇妙な症状ではある。
あやしい古典文学 No.946