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『聖城怪談録』下「 長沖屋冶兵衛慈光院の辺にて怪異に逢ふ事」より |
暗闇で何する |
町人の長沖屋冶兵衛が、田中七之進宅へ夜話に行き、夜更けに帰途についた。 慈光院という寺の前まで来ると、提灯の火がふと消えた。人が吹き消したような具合だった。 暗闇の中で、何者かが冶兵衛の口を嘗め回した。その舌と唾液が、死ぬほど臭かった。 冶兵衛は狼狽し、息を限りに家まで逃げ帰った。 舐められた口のまわりの臭気は、何度洗ってもなかなか消えず、二三日の間ずっと悩まされた。 |
あやしい古典文学 No.981 |
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