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森田盛昌『続咄随筆』中「原惣兵衛亡魂」より |
気が利かぬにも程がある |
金沢浅野町の曹洞宗廣誓寺は、原惣兵衛という人の菩提所である。 原惣兵衛は寛延四年に死去したが、その節、寺の書院に、裃を着用した惣兵衛が着座しいているのを、小僧が見つけた。 小僧は、すぐに和尚に報告した。 和尚は数日前に原の屋敷を訪問して、惣兵衛が重病で、かりに快方へ向かったとしても、そうそう寺に参詣したりできるはずがないことを知っていた。しかし、来ている以上、会わないわけにもいかない。 書院に出て対座すると、惣兵衛は言った。 「わが屋敷よりこの寺までは、道をよく覚えていて来ることができた。だが、ここから先どうするのか分からない。和尚、教えてくれないか」 和尚は、心得顔で答えた。 「二三日中には、原様の御葬式がありましょう。そのときにお教えします」 すると惣兵衛の姿は、しおしおと消え失せたという。 このことは、『なんて馬鹿な返答だ』と、当時評判になったものだ。 |
あやしい古典文学 No.982 |
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