唐来参和『模文画今怪談』より

両面の人

 信州で新田開発が行われ、利水のため、柴狩山という山の麓に井戸を掘ろうとした。
 掘っていったら、五輪の石塔が出てきた。さらに掘り深めると石の箱があった。
 あやしく思いながら蓋を開けてみたところ、大きな白骨が入っていた。前後にそれぞれ目・鼻・口があり、歯もそろった、両面の頭蓋骨であった。

 仁徳天皇の時代、このあたりで「両面宿儺(りょうめんすくな)」という異形の人が出たと記録にある。その髑髏ではないかと、人々は言い合った。
あやしい古典文学 No.992