『怪談四更鐘』より

西瓜売り

 京都の生まれで、生来兇悪の者があった。
 多くの人を殺し、京都には住めなくなったので、江戸へ来て、少しの元手で商いを始めた。
 ちょうど夏時分だったから、西瓜を担って売り歩いたが、道行く男女は恐れて逃げ回り、誰一人買う者がない。
 日ごとに元手が減って極貧となり、飢えに苦しんだ。

 本人に西瓜と見えたのは、かつて殺した人々の死首だった。
あやしい古典文学 No.998