『拾椎雑話』より、「冷めた流星」

木崎惕窓『拾椎雑話』巻七より

冷めた流星

　若狭小浜の人が、夏の夕方、川崎浜に涼みに出ていたところ、久須屋ヶ嶽の方から、長さ一間ばかりの細いものが飛んでくるのを見た。
　そのものは船小屋のあるところへ落ちたが、特に被害らしきものはないようだった。色は全体に白く、黒みも混じっていたそうだ。

　これは流星の一種で、火気の消えたものだと思われる。
　ふつうに空から落ちる流星や雷火は、火気が盛んだから燃えて尽きる。しかし、ずっと遠くの空から落ちてくるときは、すでに火気が冷めているため、燃えないらしい。

あやしい古典文学 No.1047

座敷浪人の壺蔵

あやしい古典の壺