岡村良通『寓意草』下巻より

狙撃

 取るに足らない小動物でも、人に仇なすことがある。

 佐々木金八という人の庭に、一尺ばかりの小蛇が現れたので、追い散らすと、草の中へ逃げ込んだ。
 その夜、金八が縁側の柱に寄りかかって月を眺めていたら、またその小蛇が出てきた。
 蛇は頭をもたげて、じっと金八を見据えた。
 どうするつもりだろうと見ていると、突然、口から小さな石を吹き出した。
 石はあやうく逸れて、金八の背後の柱に、三分ばかりも食い込んだ。
 蛇はそのまま姿を消した。
あやしい古典文学 No.1049