速水春暁斎『絵本小夜時雨』より

猫娘@阿波

 阿波の国のさる豪家の娘は、人並みすぐれた美貌の女だった。しかし、何の因果か、男を舐める癖があると噂されていた。

 ある若者が女の器量に惚れて、仲人を頼んでその家へ婿入りした。
 いよいよ床入りとなると、女は婿に取りつき、顔面から足先までことごとく舐めまわしたが、その舌がざらざらとして、猫の舌のようで耐えがたく、婿は実家へ逃げ帰った。
 以来、この女は「猫娘」と呼ばれるようになった。
あやしい古典文学 No.1053