下津寿泉『怪妖故事談』巻之三「血餘ノ病ノ事」より

血餘

 ある人の手の十指が爛れ崩れて、骨節の形もなくなり、ただ筋肉だけがつながった状態になった。
 肉の中からは、虫が出てくるのだった。虫は灯心のごとく細長く、丈は数尺、全身に緑色の毛が生えていた。

 この病気は、「血餘(けつよ)」と名づけられた。
 茯苓(ブクリョウ)と黄連(オウレン)を混ぜ合わせた薬を服用して、治癒することができた。
あやしい古典文学 No.1057