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『榻鴫暁筆』第十二「食糞女」より |
食糞女 |
むかし某国に、常に大便を食して飽きない女がいた。 のちに人の妻となったが、いつも深夜に起きて、人目をしのんで大便を食っていた。 ある夜、夫が怪しんであとを尾け、妻の振る舞いを見て、驚いて声をかけた。 「おぉ妻よ、糞を食うとは情けない。なにゆえに、かような奇行をなすのか」 「あら、あなた。これには深いわけがあるのです」 「わけを聞こう」 「では、話しましょう。昔むかし、ある男の家に、正妻と妾が一緒に住んでおりました。正妻は一人の僧を尊崇して、供物を捧げることを欠かしませんでした。だから、僧もまた毎日その家に立ち寄ったのです。妾はそれが気に入らず、あるとき、僧の托鉢の鉢に大便を入れ、上を飯で覆って与えました。僧は知らずに受け取って、持ち帰って大便だったのを知り、その家にはもう行かなくなりました。 以来、妾は、口も体もかぎりなく臭くなり、みんなに嫌われました。ついに死ぬと、沸屎地獄(ふっしじごく)という、煮えたぎる糞尿を浴びつつ食する地獄に落ち、さらに数千年の間、地獄道・餓鬼道・畜生道の三悪道を経巡りました。やっと罪が果てて、私という人間に生まれましたが、昔の名残で、いまだに大便を食べずにいられないのでした」 |
あやしい古典文学 No.1067 |
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